IETM と S1000D
IETM は整備員や操作員が画面上で対話的に使う電子技術マニュアルで、S1000D はその元データ(データモジュール)を作成・管理・交換するための国際仕様です。IETM が「何を作るか」、S1000D が「どう作るか」に当たります。
2 つの言葉の出どころ
Section titled “2 つの言葉の出どころ”| IETM | S1000D | |
|---|---|---|
| 何を指すか | 利用者が画面で使う対話型の技術マニュアル(成果物) | 技術文書の元データの作り方・識別・保管・交換の決まり(仕様) |
| 始まり | 1992 年、米国防総省の 3 つの軍用規格(MIL-M-87268 / MIL-D-87269 / MIL-Q-87270) | 欧州の ASD が始め、現在は ASD・AIA・A4A(旧 ATA)が共同で保守 |
| 段階の分け方 | Class 0〜5 の機能分類(現在は機能マトリクスで要件を定める) | 出力先を IETP(対話型の技術文書群)と呼び、IETM はその中の個々のマニュアルを指すことが多い |
米国防総省は 2005 年に S1000D を採用しており、現在の IETM の多くは S1000D のデータから作られます。ただし IETM は S1000D が無くても作れますし、S1000D のデータから紙や PDF だけを出力することもできます。
データの流れ
Section titled “データの流れ”flowchart LR
subgraph S1000D["S1000D が定める範囲"]
DM["データモジュール<br/>(DMC で識別される XML)"] --> CSDB["CSDB<br/>(共通ソースデータベース)"]
CSDB --> PM["パブリケーションモジュール<br/>(どの DM をどの順に)"]
BREX["BREX<br/>(プロジェクトの決まり)"] -. 検査 .-> DM
end
PM --> PDF["紙・PDF"]
PM --> IETP["IETP / IETM<br/>(閲覧ソフトで対話的に)"]
- データモジュールは、それ単体で完結する最小の情報単位です。説明・手順・故障情報・部品情報・BREX など種類ごとにスキーマが分かれています。
- CSDB はデータモジュールを格納・管理する場所です。S1000D はその機能を定めますが、特定のソフトウェアは定めません。このスタックでは、
DMC-….XMLの名前でファイルが置かれたフォルダーを CSDB と見なします。 - パブリケーションモジュールは、どのデータモジュールをどの順に並べるかを定めます。出版物の目次に当たります。
- BREX はデータモジュールの種類の 1 つで、プロジェクトで合意した決まりのうち機械で検査できるものを XML で書きます。詳しくは BREX で説明します。
日本での状況
Section titled “日本での状況”国内では「電子技術マニュアル」「電子マニュアル」「技術指令書」といった言い方が使われ、IETM に定着した訳語はありません。公開情報から確認できる範囲では、S1000D の国内利用は海外の機体メーカーや防衛事業に部品を納めるメーカーと、その制作を受託する技術マニュアル制作会社が中心です。三菱リージョナルジェット(MRJ)の開発では供給企業に S1000D 4.0.1 と MRJ 用のビジネスルールが要求されました。技術マニュアル制作会社の寄稿では、ビジネスルールの数は 450 を超えるとされています。