用語集
MCP関連の用語と概念を定義する。
このドキュメントについて
MCPエコシステムには多くの専門用語や略語が登場する。このドキュメントは、本ドキュメント群で使用される用語の定義を一箇所にまとめたリファレンスである。
初めてこのドキュメント群を読む人は、不明な用語があればここを参照することで理解を深められる。また、チーム内での共通言語として、用語の解釈を統一する役割も果たす。
プロトコル・規格
MCP(Model Context Protocol)
Anthropicが策定したAIモデルと外部ツール/リソースを接続するためのオープンプロトコル。
特徴:
- JSON-RPCベース
- ツール(Tool)、リソース(Resource)、プロンプト(Prompt)を提供
- 「AIのUSB」と例えられる関連: MCPサーバー、MCPクライアント、MCPホスト
A2A(Agent-to-Agent Protocol)
Googleが提唱し、Linux Foundationに寄贈されたエージェント間通信プロトコル。
特徴:
- エージェント同士の連携を標準化
- MCPと補完関係(MCP=ツール接続、A2A=エージェント間)
- 150社以上がサポート表明関連: Agent Card、タスク管理
RFC(Request for Comments)
IETFが発行するインターネット技術標準文書。
例:
- RFC 6455: WebSocketプロトコル
- RFC 3161: タイムスタンププロトコル
- RFC 9110: HTTP Semantics関連: IETF、MUST/SHOULD/MAY
MCPアーキテクチャ
MCPホスト(Host)
MCPクライアントを内蔵し、ユーザーインターフェースを提供するアプリケーション。
例:
- Claude Code
- Claude.ai
- Cursor
- VS Code(拡張機能経由)MCPクライアント(Client)
MCPサーバーとの通信を処理するプロトコル層。
役割:
- サーバーの発見・起動
- 接続管理
- JSON-RPC通信
- エラーハンドリング
通常はHostに内蔵されており、開発者は意識しない。MCPサーバー(Server)
ツール、リソース、プロンプトを提供するサービス。
役割:
- ツールの定義と実行
- リソースへのアクセス提供
- プロンプトテンプレートの提供
例:
- rfcxml-mcp(RFC解析)
- deepl-mcp(翻訳)
- xcomet-mcp-server(品質評価)ツール(Tool)
MCPサーバーが提供する実行可能な機能。
例:
- get_rfc_structure(rfcxml-mcp)
- translate-text(deepl-mcp)
- xcomet_evaluate(xcomet-mcp-server)
構成:
- 名前(name)
- 説明(description)
- 入力スキーマ(inputSchema)リソース(Resource)
MCPサーバーが提供するデータ・ファイル。
例:
- ファイルシステム内のファイル
- データベースのレコード
- 外部APIのデータ
URI形式で識別される。Claude Code 固有
カスタムサブエージェント(Custom Subagent)
Claude Code内で定義できる、特定タスクに特化したAIアシスタント。
定義場所:
- .claude/agents/xxx.md(プロジェクト)
- ~/.claude/agents/xxx.md(ユーザー)
特徴:
- 独立したコンテキスト
- ツール制限が可能
- 役割の明確化注意: MCPクライアントの「代わり」ではなく「上位レイヤー」
Skill(スキル)
Claude Codeで参照できる静的な知識・ガイドライン。
定義場所:
- .claude/skills/xxx/SKILL.md(プロジェクト)
- ~/.claude/skills/xxx/SKILL.md(ユーザー)
特徴:
- Markdown形式
- 実行機能なし(参照のみ)
- コンテキスト消費が低い用途: ベストプラクティス、ワークフロー定義、コーディング規約
CLAUDE.md
プロジェクトルートに配置する、Claudeへの指示ファイル。
内容:
- プロジェクト概要
- 使用MCP一覧
- コーディング規約
- ワークフロー指示要件レベル
MUST / MUST NOT
RFCにおける必須要件。遵守しないと仕様違反。
例: "A TCP implementation MUST support simultaneous open attempts"SHOULD / SHOULD NOT
RFCにおける推奨要件。正当な理由があれば違反可能。
例: "Implementations SHOULD use exponential backoff"MAY
RFCにおける任意要件。実装するかは自由。
例: "A client MAY provide additional metadata"品質評価
xCOMET
翻訳品質を評価するニューラルメトリクス。
特徴:
- 0-1のスコア(高いほど高品質)
- エラースパンの検出
- 参照訳なしでも評価可能エラー重大度(Severity)
xCOMETが検出するエラーの深刻度。
レベル:
- critical: 重大(意味の逆転、誤訳)
- major: 中程度(不自然な表現)
- minor: 軽微(スタイルの問題)AI設計パターン
RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)
外部のドキュメントをベクトル検索し、関連情報をLLMのプロンプトに注入する手法。
仕組み:
1. ドキュメントをチャンク分割 → ベクトル化 → DB格納
2. ユーザーの質問をベクトル化
3. 類似度検索で関連チャンクを取得
4. チャンクをプロンプトに注入してLLMが回答生成
強み: 大量の非構造化テキストから関連情報を見つけられる
弱み: チャンク分割で文脈が失われる、構造を理解しない関連: Embedding、ベクトルDB、チャンク
MCPとの違い: concepts/04-ai-design-patterns.md を参照
Embedding(エンベディング)
テキストを数値ベクトル(数百〜数千次元の配列)に変換すること。意味的に近いテキストは、ベクトル空間上でも近くに配置される。RAGのベクトル検索の基盤技術。
ベクトルDB(Vector Database)
Embeddingされたベクトルデータを格納・検索するための専用データベース。コサイン類似度等を用いた高速な類似度検索を提供する。
例: Pinecone、Weaviate、Chroma、pgvectorチャンク(Chunk)
ドキュメントを小さな断片に分割したもの。RAGでは、ドキュメントをチャンクに分割してからベクトル化する。チャンクのサイズや分割方法が検索精度に影響する。
Prompt Engineering(プロンプトエンジニアリング)
モデルのパラメータを変えず、入力プロンプトの工夫だけで出力品質を制御する手法。Zero-shot、Few-shot、Chain-of-Thoughtなどの技法がある。
GraphRAG
通常のRAGにナレッジグラフ(知識グラフ)を組み合わせ、エンティティ間の関係性を活用して検索・生成を行う手法。「AはBにどう関係するか」といった関係性の質問に強い。
Fine-tuning(ファインチューニング)
LLMのパラメータ自体を、特定ドメインのデータで追加学習させる手法。RAGが「外部記憶」なら、Fine-tuningは「内部知識の書き換え」に近い。
Agentic AI(エージェント型AI)
LLMが自律的に計画を立て、ツールを呼び出し、複数ステップで問題を解決するパターン。MCPはこのパターンを支える基盤技術の一つ。
関連: MCP、サブエージェント、A2A
その他
ワールドモデル(World Model)
環境の構造や物理法則に関するエージェントの内部表現。エージェントが「次に何が起こるか」を予測し、行動の結果をシミュレーションするための基盤となる概念。
文脈:
- ロボティクス・自動運転: 物理法則(重力、慣性、衝突)の内部モデル
- LLM: テキストの因果関係や世界の常識的な振る舞いの暗黙的理解
- 強化学習: 環境のダイナミクスモデル(model-based RL)本サイトでは主にフィジカルAIの文脈で扱う。情報空間のエージェントにおいても暗黙的に存在するが、物理世界で行動するエージェントにとっては不可欠な要素である。
参考: Yann LeCun — A Path Towards Autonomous Machine Intelligence (2022)
ブレない参照先
AIの判断を一貫させるための権威ある情報源。
階層:
1. 国際標準・法規制(MUST遵守)
2. 業界標準・デファクト(SHOULD遵守)
3. 組織・プロジェクト規約(ローカル)
4. ベストプラクティス(推奨)知識の民主化
専門知識へのアクセス障壁を下げること。
MCPの文脈では:
- 仕様書を読める人が限られている
→ AIがMCP経由で参照し、誰でも理解可能な形で提供
- 高額なコンサルや専門家に頼らなくても
正確な情報に基づいた開発ができるAI駆動開発
AIをコード生成だけでなく、開発全工程で「知的アシスタント」として活用する開発手法。
≠ AIにコードを書かせること
= 全工程でAIを活用し、人間は判断・創造に集中Over-MCPization(過剰MCP化)
必要以上にMCPサーバーを追加し、コンテキストウィンドウを圧迫する状態。
症状:
- ツール定義が常駐してコンテキスト消費
- 起動オーバーヘッド増大
- 70k問題(ツール多すぎで性能劣化)
対策:
- Skillで代替できるものは移行
- プロジェクト毎にMCPを限定Agent Card
A2Aプロトコルにおける、エージェントの自己紹介情報。
配置: /.well-known/agent.json
内容:
- エージェント名
- エンドポイント
- 提供スキル
- 認証方式略語一覧
| 略語 | 正式名称 | 説明 |
|---|---|---|
| RAG | Retrieval-Augmented Generation | 検索拡張生成 |
| MCP | Model Context Protocol | AIとツールの接続プロトコル |
| A2A | Agent-to-Agent Protocol | エージェント間通信プロトコル |
| RFC | Request for Comments | IETF技術標準文書 |
| IETF | Internet Engineering Task Force | インターネット技術標準化団体 |
| W3C | World Wide Web Consortium | Web標準化団体 |
| WHATWG | Web Hypertext Application Technology Working Group | HTML等の標準化団体 |
| API | Application Programming Interface | アプリケーション間インターフェース |
| JSON-RPC | JSON Remote Procedure Call | JSONベースのRPCプロトコル |
| ADR | Architecture Decision Record | アーキテクチャ決定記録 |
| TLS | Transport Layer Security | 通信暗号化プロトコル |
| TSA | Time Stamp Authority | タイムスタンプ局 |