II.2 配置基準
本章の位置づけ
II.1 五層 で、各層の担当を決めた。本章は、具体的な知識や接続を、どの層へ置くかを決める。限界の説明は繰り返さない。MCP サーバーの作り方と Skill の書き方は第III部へ送る。
2.1 置く場所を決める問い
新しい決まり、手順、接続、記憶を、どこへ置くかを決めるとき、次を問う。
- 実行が要るか。値は、その都度変わるか。
- 公式の原文へたどれるか。
- 会話が終わったあとも残す関係か。
- 目的と優先順位か。手順と例か。
- 役割として分けた方がよいか。
答えが、層を決める。ファイルをどこに置くかが先ではない。
2.2 確認できる参照先
モデルの出力を、推測のままにしない。あとから原文と照合できる参照先を置く。
以前の稿は、これを「ブレない参照先」と呼んだ。本書では、次の性質を文で書く。
| 性質 | 意味 |
|---|---|
| 権威性 | 書いた人が、その分野で決める立場にある。または専門家として認められている |
| 版が残ること | 出したあとに、黙って中身が変わらない。変わるときは版が残る |
| 構造化 | 章・節・条のように、「ここのこと」と指せる |
| 照合できること | 答えを、原文と突き合わせられる |
| プログラムから読めること | 人の目だけでなく、ツールからも取れる形がある |
全部が最高でなくてよい。権威も版も無い情報源を、原文がわりにしてはならない(MUST NOT / してはならない)。構造が弱く、プログラムからも取りにくい情報源は、MCP にする価値を別に見るのがよい(SHOULD / するのがよい)。
現場での確認は 参照先選定チェックリスト を使う。
2.3 強さの順と、置く層
参照先には、守る強さの差がある。強さの言葉は RFC 2119 に合わせる。
| レベル | 内容 | 守り方 | 主に置く層 |
|---|---|---|---|
| 1 | 国際標準・法令 | MUST(しなければならない) | MCP(原文への接続) |
| 2 | 業界で事実上の標準 | SHOULD(するのがよい) | MCP。取れ方によっては Skills |
| 3 | 組織やプロジェクトの決まり | その場では守る | Skills。優先順位は Doctrine |
| 4 | よいやり方の例 | 推奨 | Skills |
法令、RFC、W3C の仕様は、推測で埋めない。MCP で原文につなぐ。組織の決まりと作業手順は、モデルの中には入っていない。Skills に書く。何を優先するかは Doctrine に書く。
2.4 配置の判定
原文へたどるかどうかは、層を選ぶ話そのものではない。MCP に置いてよいかの質の話である。質は 2.2 と 2.3 で見る。
| 置くもの | 層 | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 法令、RFC、W3C など、原文への接続 | MCP | Skills に原文をコピーして終わりにすること |
| 翻訳ルール、コーディング規約、手順 | Skills | MCP のツール説明文だけに書くこと |
| 目的、禁止、優先順位 | Doctrine | 毎回のプロンプトにだけ書くこと |
| 顧客、案件、前回の決定などの関係 | Memory | 会話の履歴だけに残すこと |
| 役割の分離、依頼、結果のまとめ | Agent | MCP サーバーに役割を埋め込んで終わりにすること |
その場で動かす処理と、外の API は MCP である。変わらない知識は Skills である。コードとして動かす処理が要る場合も MCP である。役割を分けるなら Agent である。
判断が要らない処理は、普通のプログラムに直接置いてよい。人間が自分で判断する操作は、公式の CLI のままでよい。何でも MCP にしてはならない(MUST NOT / してはならない)。
2.5 食い違いと出典
参照先が食い違うときは、守る強さの高い側を先に採る。法令は業界の慣行に勝つ。いま有効な RFC は、置き換え済みの RFC に勝つ。出典は、どの版の、どの箇所かを付けて残さなければならない(MUST / しなければならない)。
推測と参照は、出力のうえで分けて書くのがよい(SHOULD / するのがよい)。参照できない箇所は、参照できないと書く。
2.6 本章が決めないこと
MCP のツールをどう切るかは第III部である。Skill の書き方も第III部である。Memory に何の製品を使うかも第III部である。どこまで届くかは第IV部である。
2.7 要約
置く場所は、実行が要るか、原文へたどるか、記憶の寿命か、目的か手順か、役割を分けるか、で決める。確認できる参照は MCP でつなぎ、手順は Skills に書き、優先順位は Doctrine に置き、関係は Memory に残し、組み合わせは Agent が持つ。推測で原文の代わりをしてはならない。
手段の選択で迷うときは、鮮度・判断の量・データの状態の三軸も使える。資源とアクセスの見取り図は 全体地図 にある。
関連ドキュメント
- II.1 五層 — 各層の担当
- 全体地図 — 資源・アクセス・循環の見取り図(五層とは軸が違う)
- 参照先選定チェックリスト — 使ってよいかの確認
- MCP vs Skills — いまの使い分けの各論
- understanding-llm / Part 6: ツールコンテキスト — MCP をいつも全部載せない理由
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