IV.2 限界
本章の位置づけ
第I部は限界を要約した。本章は、いまの手段でどこまで届くかを見る。消えると約束しない。第I部の再説は短くし、届き方の差に集中する。
2.1 届き方は、四つで違う
Claude に今日の法令を聞いても、学習の打ち切りよりあとは、つながない限り分からない。つなぐと、新しさはかなり補える。ただし、つないでも「公式の解釈です」とは名乗れない。責任は、さらに残る。
| 限界 | いま届く範囲 | 理由 |
|---|---|---|
| 最新性 | かなり補える | 原文や検索へ、その場でつなげる |
| 正確性 | 減らせる。無くならない | 次の言葉を予測する性質は、残る |
| 権威性 | 減らせる。公式にはならない | 出力は、一つの読み方である |
| 責任性 | 技術だけでは足りない | 法と倫理の側の話である。技術は記録と線を足す |
知識の側(新しさ、正確さ)は、外から足して、機械で確かめやすい。制度の側(権威、責任)は、人間の判断が残る。この区別が、設計の出発点である。
正確さを完全に消す設計は、書かない。確率で書く以上、ゼロにはならない。減らし方は、原文へつなぐこと、出したあとに照合すること、分からないと書くこと、人が見ること、である。
2.2 確率で書くことと、機械で確かめること
モデルは、それらしい文を書く。確かめる側は、できるなら機械にする。混ぜると、どちらも弱くなる。
たとえば訳の仕事なら、文を書くのはモデル、xCOMET の点を取るのはツール、0.85 を下回ったら差し戻すのは Doctrine の線である。できたかどうかは、モデルの「できた」に任せてはならない(MUST NOT / してはならない)。これは第I部と同じである。
監査の記録、どの版のどの箇所を見たか、は技術で残せる。残した記録が、責任そのものになるわけではない。最後の判断は人間の側に残る。
2.3 五層での受け方
| 限界 | 主に受ける層 | 受けるが、終わらないこと |
|---|---|---|
| 最新性 | MCP | つなぎ先が古いと、新しさは戻る |
| 正確性 | MCP + Skills + Agent の確認 | 推測は残る |
| 権威性 | MCP(原文)+ Doctrine(公式と名乗らない) | 出力は公式見解ではない |
| 責任性 | Doctrine + 人の確認 + 記録 | システムは責任を引き受けない |
旧稿は三層でこの表を書いていた。本書は五層で見る。物差しは Doctrine、前回の続きは Memory である。制度の設計そのものは、序章で対象外にした。ここでも立ち入らない。
2.4 本章が約束しないこと
| 言うこと | 言わないこと |
|---|---|
| つなぎと確認で、ずれる機会は減らせる | ずれは無くなる |
| 出典を付けられる | 人が見なくてよくなる |
| 記録を残せる | 法的責任をシステムが持つ |
どこまで自律させるかは、仕事ごとに決める。全部をエージェントに任せるのが、よい設計だとは限らない。
2.5 要約
新しさはつなぎでかなり補える。正確さは減らせるが、消えない。権威は原文へたどれるが、公式にはならない。責任は技術の外に残る。確率で書くことと、機械で確かめることを分ける。
関連ドキュメント
前へ: IV.1 パターン
次へ: IV.3 物理世界